シロアリの生態

シロアリは、同じ成虫であっても役割により姿が違う。役割を分担しつつ集団を維持することから社会性昆虫と呼ばれる。光を嫌うため観察が難しく、生活史には未解明の点が多く残されている。多くの種で、働きアリが白っぽい体色をしていることが名前の所以となっている。しかし、同じ群の中から生じる羽(はね)アリの体色は、働きアリと比べて濃色であり、種類によって異なるが淡褐色~黒色となる。

ヤマトシロアリの生活環

雄と雌の羽アリが出会うと、羽を落として土中や腐朽材に潜り込み、新しい群(コロニー)を創設する。膨大な数の羽アリが飛び出す様を見ていると、どれだけの家屋が新たな害を被るのかと心配になる人もいるだろうが、ほとんどの個体は、様々な天敵の食餌として消えてゆく。正確に追跡した記録はないが、結局1%にも満たないペアが巣作りに成功するだけで、その巣のうちさらにわずかなものが家屋を食害すると考える。いたずらに心配する必要は全くない。

 

木材を食べることで害虫とされるが、森林の生態系などでは分解者として、重要な位置にある。近畿地方の主要都市で、最も問題化することが多いのはヤマトシロアリという種類。この種類に関しては、庭にいるからといって恐れたりする必要はない。土壌中には普通にいる昆虫と考えるべきである。

 

太平洋側沿岸域にいるイエシロアリは、ヤマトシロアリと違い、家屋から離れた巣からやってきて乾燥した木材に大きな被害を与えることがある。特に、近年の高気密高断熱型の住宅が加害された場合、難防除となることが多い。


巣の中のヤマトシロアリ

はねあり(有翅虫、右図の黒っぽい個体)は、3~4月頃に被害材の中で羽化する。飛び出す前のはねありの付近には兵隊あり(兵蟻、右図右上付近の頭部が大きい個体)が多く見られる。

飛翔しようとする「はねあり」

ヤマトシロアリの「はねあり(有翅虫)」は、大阪府下では5月上旬をピークとして前後2週間ほどの期間に飛翔する。一年中暖房しているような場所では例外的に2月に発生した事例もある。はねありの黒い体色と姿は、白い働きありと大きくイメージが異なるため、両者は別の昆虫のようにすら思える。